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2011年02月04日

特恵関税制度改正 -中国製品の関税が上がる?-

こんにちは。西田です。今回は特に中国から輸入されている方々にとって、要注意な話題です。

これまで何度か当ブログでも、登場している特恵関税制度。
この制度は10年毎に見直される事になっており、今年がちょうどその見直しの年に当たります。
そんな中、一部報道でも中国産の優遇関税が見直されると取り沙汰されています。
それは、今国会で審議される特恵関税制度の見直し案の中にある、
産品の競争力に基づく国別・品目別特恵適用除外措置の適用基準の改正案に端を発します。

大きな変更点として
<1>2年連続して、<2>輸入額が 10 億円を超え、<3>同一の物品の総輸入額の50%を超えるもので、
かつ本邦において同種の物品その他用途が直接競合する物品の国内生産の事実が認められると
特恵適用除外となっていたのが、
<1>過去3年間の平均で、<2>当該輸入額が同一の物品の総輸入額の50%を超える物品は、
特恵適用の対象から3年間除外する。ただし、その輸入額が15 億円を超えない場合は除外しない。
となります。

これを読んで頂いても、何がどうなるのか、わかりにくいと思いますが、要するに、
これまでは国内産業と競合が認められなければ、市場占有率が高くても、
特恵関税が適用されていたのですが、今改正案では市場占有率が高い産品は、
例外なく特恵除外の対象になる事が大きな変更点だと言えます。

新しい基準が適用された場合の特恵除外措置となる国別対象品目は下のファイルの通りです。

産品の競争力に基づく国別・品目別特恵適用除外措置の対象品目.pdf

(平成23年度税制改正大綱(内閣府ホームページ)より抜粋)
結果、特恵除外の対象となる産品の生産国のほとんどが中国であり、
中国の産品の市場占有率の高さを裏付けています。

この中国製品の市場占有率の高さは、この改正案が審議される大きな理由の一つです。
平成23年度関税改正における主な検討項目に
WTOルールにより整合的となるように、適用基準を見直し、
幅広く途上国に便益を及ぼすよう検討されています。

確かに私たちの身の回りには、中国製品が溢れています。100円ショップに行くと玩具や生活用品は、
中国製が目立ち、ほかの途上国製のものは、あまり見られません。
人件費、日本からの距離などを考えると、「大量生産、大量仕入れ」の発信地として中国が最適であり、
生産を一極集中することが効率的であるからだと思います。
このような状況下の元では、すぐに生産を他国に移し、質、量を確保するのは、困難であり、
今回の特恵優遇措置の見直しが「幅広く途上国に便益を及ぼす」という成果を得るには、
長い目で見守る必要がありそうです。

一方で、経済成長の著しい中国では、人件費の上昇は避けられず、
中国政府もこれまでの労働集約型の産業から脱却し、所得倍増を目指しています。
その上、中国の若者も「きつい・きたない・危険」といった、
いわゆる3Kの仕事には行きたがらなくなり、工場では人手が集まらないという話をよく耳にします。
そのため、年々人件費は上昇し、例えば上海の一般工職作業員の基本月給は249.4米ドル※で、
ハノイ(ベトナム)の一般工職作業員の基本月給は95.8米ドル※と大きな差が出てきています。
今後も中国での人件費の上昇は想定されますので、
中国に生産を一極集中することのリスクは低くないでしょう。
「大量生産、大量仕入れ」を行う上で、生産リスクの分散化は必要不可欠だと思います。

特恵優遇措置の見直しもレアメタル問題と同様、
現在の中国依存を一考するよい機会になるのかもしれませんね。

追記:2011年4月1日 本ブログで紹介した「特恵関税制度改正」を含む「関税定率法等の一部を改正する法律」が施行されました。


※第19回 アジア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2009年5月) - 日本 - ジェトロ による

「スタッフブログ」(特恵関税制度が使えない!?)も御覧ください>> 

「スタッフブログ」(原産地証明書がなくても、特恵関税が受けられる条件とは)も御覧ください>>

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